「皮質脊髄路」という言葉は、解剖学や脳神経科学を学んだことのある学生さんであれば聞いたことがあると思います。しかし、臨床においてはその役割や通り道、脳画像上ではどこを見ればよいかなどを把握しておくことが何より重要になります。今回、皮質脊髄路の役割と脳画像における通り道についてまとめていきたいと思います。
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目次
脳の事や脳画像について勉強したい方は
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皮質脊髄路の役割
「皮質脊髄路って何?」「皮質脊髄路と脳卒中はどのような関係があるの?」と指導者から聞かれた場合、どのように答えたらよいのでしょうか。
皮質脊髄路とは、
大脳皮質の運動野から脊髄を経て骨格筋に至る軸索(神経線維)の伝導路(束)のこと。錐体路(英: pyramidal tract)ともいう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%AE%E8%B3%AA%E8%84%8A%E9%AB%84%E8%B7%AF
とあります。
ここで、説明の中に錐体路という言葉が出てきました。
錐体路について、
運動神経線維(ニューロン)の遠心性経路で延髄の錐体を通る経路のことを錐体路という。随意運動の指令を伝える。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8C%90%E4%BD%93%E8%B7%AF%E9%9A%9C%E5%AE%B3
とあります。
このことから、皮質脊髄路(錐体路)は、随意運動の発現に関与しており、皮質脊髄路の損傷により随意運動障害が起こることがわかります。
皮質脊髄路は筋収縮の強さ、すなわち
①何個の運動細胞が興奮するか(量)
②1つの運動細胞がどれだけ強く興奮するか(強さ)
という事に関与しています。
そのため、皮質脊髄路が障害されると、脊髄運動細胞の興奮が低下し、筋収縮が弱くなります。この状態を神経原性筋力低下といいます。
これは、脳卒中の方においても筋力低下という概念が存在するということを示しているといってよいと思います。
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皮質脊髄路は2つある!
皮質脊髄路は、実は2つ存在します。
ひとつは外側皮質脊髄路、もうひとつは前皮質脊髄路です。
外側皮質脊髄路は錐体路の90%を占めるとされています。
その役割は四肢の随意運動に関与します。
前皮質脊髄路は錐体路の10%を占めるとされています。
その役割は体幹や上下肢の近位筋(正中に近い筋)の制御に関わっています。
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皮質脊髄路はどこを通るのか
今までの話から皮質脊髄路は随意運動に関与し、その障害で神経原性の筋力低下が起こること、また皮質脊髄路は外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路の2つがあることがわかりました。
では、それぞれの皮質脊髄路はどのような経路をたどり骨格筋に至るのかを把握していきます。
外側皮質脊髄路の通り道としては、
一次運動野→内包後脚→中脳大脳脚→橋→延髄(錐体交叉)→脊髄側索→脊髄前角細胞で下位運動ニューロンとシナプス形成
というようになっています。
また、前皮質脊髄路の通り道としては、
前皮質脊髄では、錐体交叉をせずに脊髄前索を下行し、脊髄前角へ(一部は反対側の前角へ)
というようになっています。
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皮質脊髄路と脳画像
まず、皮質脊髄路の通り道から、脳画像ではどこの部分を通るかを確認していきます。
頭頂レベルで見ていきます。
中心溝を探し、見つけると、一次運動野がわかります。
脳の内側から、下肢、上肢・手指、顔面と損傷を受ける部位によって運動麻痺の出方に違いがあります。
ちなみに、一次運動野の障害では随意運動障害のなかでも「分離運動障害」というものがみられるようになります。
皮質脊髄路の障害における随意運動障害とはまた違った概念となるため、分離運動障害についてもしっかりと把握しておく必要があります。
詳しくは、以下の記事を参照してください。
脳卒中運動麻痺〜一次運動野と皮質脊髄路による捉え方の違い〜
次に、側脳室体部レベルで見ていきます。
キューピー人形の体の各部位の位置は、脳の損傷を受けた場合に見られる運動麻痺の出現部位と一致します(大まかにです)。
松果体レベルでは、内包後脚が確認しやすくなります。
前途しましたが、内包は大脳基底核(尾状核、レンズ核(被殻、淡蒼球))と視床に挟まれた、「く」の字になっている部分です(図の場合は逆「く」の字)。
内包後脚では、上から皮質延髄路、皮質脊髄路と並んでいます。
皮質脊髄路は、内包後脚の真ん中から少し上のあたりから、下に向かって上肢→体幹→下肢と痲痺の出現が異なります。
内包後脚が損傷を受けていれば、松果体レベルで画像を見れば良いですが、皮質脊髄路は中脳、橋レベルにおいても通り道となっているため、その付近の損傷があると運動麻痺が生じます。
下図は、中脳や橋、延髄レベルでの皮質脊髄路が通る位置です。
出展:中上 博之先生の講義資料
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