今の学生さんはどのような教育を受けているのかはわかりませんが、昔は脳卒中では筋力低下の考え方は用いないというようなニュアンスで指導を受けた覚えがあります。しかし、脳卒中片麻痺者においては、筋力低下も十分ありえると考えられます。今回、脳卒中片麻痺者では筋力低下が起こるのかについてまとめていきたいと思います。
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目次
運動麻痺とはどういうことか
脳卒中の評価を行う上では、「運動麻痺」という用語がどのような意味をなしているかを把握しておく必要があります。
運動麻痺とは、随意運動の機能障害をさしています。
また随意運動とは、自分の意思または意図に基づいた運動をさします。
すなわち、運動麻痺とは「自分の意思または意図に基づいた運動ができない状態」をさします。
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随意運動はどのように生じるのか
先ほど、運動麻痺の概念について理解ができました。
では、その随意運動はどのように生じるのかを考えていきたいと思います。
随意運動が起こるには大脳の一次運動野と、皮質脊髄路の働きが重要になります。
一次運動野:
一次運動野には、体部位局在(体部位再現)というものがあります。
身体を構成する特定の体部位の再現が中枢神経系の特定の領域と1対1に対応する場合、体部位再現がある、という。大脳皮質第一次体性感覚野や第一次運動野の体部位再現が典型的な例としてあげられる。
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E4%BD%93%E9%83%A8%E4%BD%8D%E5%86%8D%E7%8F%BE
一次運動野はスイッチのような役割があり、ある部位を刺激すると、それに対応する部位が動くということです。
ペンフィールドのホムンクルスが有名です。
皮質脊髄路:
運動発現の経路としては、一次運動野から放線冠、内包、大脳脚を通って延髄の錐体で交叉し、反対側の脊髄を下降して脊髄前角の運動細胞へ伝わります。
この通り道(伝導路)のことを皮質脊髄路と呼びます。また、皮質脊髄路は錐体路とも呼ばれています。
皮質脊髄路は筋収縮の強さに関与します。これは、何個の運動細胞が興奮するか(量)、また1つの運動細胞がどれだけ強く興奮するか(強さ)ということを示しています。
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脳卒中における運動麻痺の種類
今までの話から、運動が発現するには一次運動野と皮質脊髄路が関与し、これらが障害されることで運動麻痺が起こることがわかります。
では、脳卒中における運動麻痺の種類について考えていきます。
一次運動野は、ホムンクルスからわかるように、ある部位のスイッチが入ると、それに対応した部位の運動を起こします。
そのため、一次運動野が障害されると「共同運動」と呼ばれる症状が出現します。
共同運動は文字通り、ある関節運動を起こそうとしても、他の関節運動も共同して運動が起こってしまう現象です。
一次運動野は前大脳動脈領域の血管支配なので、その部位に梗塞が起こると共同運動が生じてしまうことになります。
皮質脊髄路は、先ほども述べましたが何個の運動細胞が興奮するか(量)、また1つの運動細胞がどれだけ強く興奮するか(強さ)というような筋の出力に関与します。
筋出力が低くなるというのは、筋収縮力が低くなるということです。
筋肉の収縮力が低いというのは、すなわち筋力低下が存在するということになります。
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脳卒中では筋力低下が起こる!!
これまでの話から、脳卒中片麻痺者においては筋力低下が起こることがわかりました。
ただし、その場合は皮質脊髄路の障害においてです。
一次運動野の障害の場合には、運動麻痺としては共同運動ということになります。
このことを理解していると、受け持った対象者の方がどの部分に損傷があるかがわかれば、随意運動の障害として現れている運動の行いにくさが何を原因としているのかが捉えやすくなると思います。
原因を知ることができれば、筋力低下に対するアプローチ、共同運動に対するアプローチというように、状態にあったアプローチが選択できます。
これは、脳卒中片麻痺者を捉える上で大変重要な要素になるので、ぜひ運動麻痺について理解を深めておいてください。
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