認知症の評価として、MMSEとHDS-Rの概要と評価方法、結果の解釈についてまとめていきたいと思います。

MMSEとHDS-Rの概要と評価方法、結果の解釈!

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MMSEとHDS-Rの対比と実施上の注意点

MMSEとHDS-Rの共通点と相違点

MMSE HDS-R
見当識(時間、場所)
記憶

3単語(直後、遅延再生)

5物品記銘

 

 

 

計算

100から順に7を引く

5回まで

2回まで

数唱
語想起
言語検査

呼称、復唱、理解

読み、書字

模写

 

両者は見当識、記憶、注意集中、計算をみる検査項目が含まれています。

HDS-Rでは動作を要する項目がないことと、野菜の語想起課題がある点が特徴的です。また3単語の遅延再生に6点の配点があり、近時記憶への負荷が大きいことが伺えます。

両者とも30点満点で採点し、HDS-Rは20点以下を明らかな認知症としており、MMSEでは24点以上を健常人としています。

MMSEの成績は教育歴に左右されると言われていますが、日本では6年間の義務教育が行われている事から、より高得点を境界とすべきだと言われています。

健常人32名(平均年齢68.8歳(SD 6.4)、範囲56〜79;教育歴11.8年(SD 3.0)、範囲8〜21)に実施した結果では、MMSEの平均29.1(SD1.1)、範囲27〜30とかなり高い値が得られた。したがってMMSEは明らかな異常と判断できる

高次脳機能障害学 第2版 P240

検査の結果(得点)だけに注目するのではなく、障害が明らかな項目に注目して詳細に検査、評価することが必要です。

例えば、3単語の遅延再生において1つでも出てこない場合、前向性健忘を念頭に置き三宅式記銘力検査などを行うことが推奨されます。

MMSEについて以下のようなことも言われています。

認知機能障害のある患者の83.8%,アルツハイマー型認知症患者の95.8%が23点以下,健常者の93.3%が24点以上の成績を示したことから,23/24点をカットオフ値とすることが望ましい と報告している(森ほか,1985). そのカットオフ値の感度は83%,特異度は93% であり,高い精度を有する検査であるといえる.

運動による脳の制御 P104

このカットオフ値は学歴や職業歴に影響を受けるとされており、高学歴者においては初期認知症を見逃すこともあります。

教育歴の少ない者においては計算や読み書きなどの成績不良により認知症と診断される傾向が強くなります。

認知症の軽度もしくは初期の方では感度が低く、 20点以上の認知症群に対しては感度が50%程度まで低下してしまうとの報告があります。

実施にあたっては年齢、教育年数、生活状況に関する情報の評価も含めた総合的な判断が求められます。

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MMSEとHDS-R実施上の注意点

実施の際、特に注意のいる項目について説明していきます。

場所の見当識:通常は、現在いる「病院、県、市町村、階、地方」ですが、住む地域、施設によって置き換えが可能で、5つ実施すればよいです。

3単語即時再生:
採点するのは1回目のみです。遅延再生のための記憶の登録として3つとも復唱できない場合、5回まで単語の提示と復唱を繰り返すことができます。

計算:

まず、「100から7を繰り返し引いてください。私が「終わり」と言うまで、続けて、引き算した結果から、さらに7を引くことを繰り返してください。」という教示を与える。もう少し噛み砕いた言い方でも良いが、計算を始めたら、「それから7を引いてください」と言ってはならず、必要があれば「続けてください/繰り返してください」程度の促しのみを行う。
HDS-Rでは100ー7の答えに対して「それからまた7を引くといくつですか?」と言って良いが、MMSEでは言ってはならない。そのため、MMSEとHDS-Rを合わせた形で同時に実施することはできない。

高次脳機能障害学 第2版 P241

全く正答できない場合を除いて、途中で間違えても5回実施します。
採点について、答えを間違えても、次の引き算が正しければ、その答えには1点を与えます。例えば、100ー7=93(1点)→90(0点)→83点(1点)…というようになります。

3段階命令:

全ての命令を言い終えてから行ってもらいます。

模写:
採点は「五角形が2つ、重なった部分が4つの辺からなる(潰れた)四角形になるようになっていたら1点を与える」という基準で行います。

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HDS-Rの概要、実施上の注意点と結果の解釈

HDS-Rの概要

HDS-Rは年齢、見当識、3つの言葉の記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、野菜の名前の列挙(語の流暢性)、5つの物品記銘などの9項目からなり、最高得点は30点で、認知症のスクリーニング検査として使用されています。

HDS-Rには動作性検査(図形模写のような項目)が含まれておらず、本人の生年月日を把握していれば、他に情報がなくても検査を実施できるメリットがあります。

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実施上の注意点

導入:いきなり検査を開始せず、世間話などをしてリラックスした状態で始めます。また「最近物忘れはきになったりしませんか?」などと問い掛けながら導入していきます。

年齢:満年齢を正確に言えると1点で、2年までの誤差は正当とみなします。これは、数え年で答える方もいて、誕生日を迎えているかで年齢に差が出ることがあるためです。生年月日を言えただけでは0点になります。

日時の見当識:何年何月何日何曜日を続けて聞いてもよいし、別々に聞いても構いません。逆から聞いた方が正当する場合もあります。それぞれに対し正当すれば1点となり、年は西暦でも年号でも構いません。

場所の見当識:病院名や施設名、住所は正確でなくてもよく、今いる場所がどのような所なのかを答えることができれば構いません。ヒントを与える場合、「家ですか」「デイサービスですか」「公民館ですか」などと言い回しを変えても構いません。

3つの言葉の記銘:正当が出ない場合、採点後に3つの言葉を覚えてもらい、3回以上繰り返しても覚えられない場合は打ち切り、遅延再生の際に覚えられなかった言葉を抜いて検査します(2つしか覚えられなかった場合、遅延再生では2つ思い出してもらう)。

計算:「100引く7はいくつですか」「それからまた7を引くといくつですか」というように順に聞いていきます。最初の答えが間違っていればそこで中止します。MMSEの計算の項目とは質問の仕方が異なるため注意が必要です。ワーキングメモリの検査であるため、質問の中に前の計算の答えを言ってはいけません。

数字の逆唱:開始前に、練習問題を入れるとよいです。「数字を反対から言ってみてください。1、2、3を反対から言うと?」のように聞きます。3桁で失敗したら打ち切ります。

3つの言葉の想起:ヒントは1つずつ提示します。すぐにヒントを与えず、「他にもありましたね」と待つ姿勢も必要です。

5つの物品記銘:品物はなんでもよいですが、本人に馴染みのあるもので、かつ相互関係のないものとします。どの物品から思い出しても構いません。

野菜の名前の列挙(後の流暢性):重複した答えが出てきても、そのまま記録し、採点の際に減点していきます。10秒待っても次が出てこない場合、打ち切ります。

終了後:答えられなかった事が多い場合、嫌な思いをすることがあるため、終了後には「疲れていませんか?」といった声かけや、野菜の話など(料理など)をし、嫌な気分のまま終了することがないようにします。

結果の解釈

30点満点中21点以上を認知症の疑いなし、20点以下を疑いありとした場合、感度は0.93、特異度は0.86と高くなります。

重症度の分類は行いませんが、重症度別の平均点が示されています。
非認知症 :24.27±3.91
軽度   :19.10±5.04
中等度  :15.43±3.68
やや高度 :10.73±5.40
非常に重度:4.0±2.62

カットオフ値を20/21とした場合に.感度は93%と特異度は86%であり, MMSE と比較しても認知症の弁別力は高いとされる(加藤ほか,1991).

運動による脳の制御 P105

認知症が中等度に進行し記銘力が低下した者では、5物品の記銘と即時再生課題がの得点低下により、MMSEよりも得点が低めになることが多くあります。

聴覚提示される単語の記銘に対して,物品 は目前に視覚提示されるため. 記銘に動員される感覚様式が異なり,聴力が低下し た高齢者では. 単語の再生よりも物品の再生で成績が回復する場合がある.

運動による脳の制御 P105

MMSEでは聴覚提示の項目が多く、聴力低下が成績低下につながることがあります。

HDS-Rでは視空間認知の評価がないため、補助検査が必要となります。